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伸び伸びと枝を伸ばした桜や銀杏。
植え込まれた椿やツツジに囲まれ、表から見ると死角になるその場所は隠れるにはうってつけだった。
彼女はその場所に身を潜めて息を殺した。
彼女の心臓がドクドクと動く。
どうか見つからないで!
彼女は両手を強く合わせて祈った。
見つからないで!
お願い!
見つからないで!
公園のブランコが風に揺らされてキィッと音を立てる。
その音に驚いた彼女は一歩後ずさる。
「キャッ!」
何かに躓き彼女は後ろ向きのままよろよろと歩く。
バランスを崩した彼女は一歩、また一歩と後ろ向きのまま足を進める。
そして、もう一歩足を進めたその場所に彼女は地面の感触を感じる事無く、落下した。
「キャァァァァァァ!」
悲鳴を上げて彼女は落ちる。
そして、ドサリと音を立てて、その場所に彼女は着地した。
「痛たたっ……何なのよ?」
彼女は自分に何が起きたのかさっぱり解らなかった。
彼女は辺りを見渡す。
しかし、見えるのはただただ闇だけだ。
彼女は恐る恐る闇に向かって両手を突出し、回りに何が有るのか手探りした。
冷たい感触。
右も左も、前も後も同じ。
彼女は頭上を見上げる。
丸く切り抜かれた頭上の景色はただ明るかった。
その明るい光は、しかし、彼女の元まで届く事は無い。
彼女は丸い光を見上げながら、自分は落ちたのだと感じた。
彼女は再び、手探りで辺りを探る。
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