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「もう、校門が閉まっちゃうから、続きは、また明日にしようよ」
誰も居なくなった校庭を見渡して、良が言う。
「そうね、遅くなるとママが煩いしね! 明日は宝物、沢山出て来るかな?」
「そうだね! 凄いの出て来るかも知れないね! ひとみちゃん、家、どっち?」
「三歩堂の方。りょう君は?」
三歩堂は、学校の近くに有る文房具屋だ。
良が、「僕も家、そっち」と言ったので、二人は一緒に帰る事にした。
二人は幸福感でいっぱいと言う顔をして、並んで歩いた。
次ぎの日の放課後、良と瞳は、昨日、二人で掘った穴が有ったであろう場所にたたずんでいた。
「穴、無くなっちゃったね……」
瞳がポツリとそう言うと、良は悲しそうな顔をして穴の有った場所にしゃがみ込んで、その後を手で撫でながら言った。
「きっと、先生達の内の誰かが穴を埋めたんだよ。先生達はいつも、使った物は片付けておく事って僕らに言ってるからね。この間の朝礼で、学校は皆の物だから、他の子の事を考えて、遊んだ後は元通りにしなきゃダメだって校長先生も言ってたし」
良の言葉に、瞳は、ほっぺたを膨らませて「もしかしたら、他の子が意地悪で穴を埋めたのかも知れないわよ! どうしてそんな意地悪が出来るのか解らない様な酷い事する子、ウチのクラスにもいるじゃない!」と言って地面を蹴った。
二人が掘った穴は、埋められていた。
良と瞳は、僅かに残る穴の痕跡を眺めながら、しばらく二人で、何故穴が埋められたのか、ああでも無いこうでも無いと話し合った。
「もう、校庭に穴を掘るのは無理かも知れないね。先生がこの穴を埋めたなら、新しい穴を掘ってもまた埋められちゃうよ」
良がそう言うと、瞳も心底残念という顔をして「そうね、意地悪な子の仕業だとしても、また意地悪されて埋められてしまうかも知れないわよね」と言った。
とても頑張って穴を掘ったのだ。
二人で、頑張って、結構深く掘れたのだ。
二人の手は土で真っ黒に汚れ、爪の間には土が入り込んだ。
服も土で汚れたけれど、そんな事は構わずに、良と瞳は懸命に穴を掘ったのだ。
しかし、二人の穴は埋められてしまった。
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