5人が本棚に入れています
本棚に追加
砂の城の様に儚く消えてしまったのだ。
瞳は、悲しそうに穴の後を見つめる良の横顔を見た。
そして、ハッとした顔をすると、興奮した様子で良に話し掛けた。
「りょう君! あのね、秘密の場所があるの! そこなら誰にも邪魔されないわ! 私のとっておきの場所なの! りょう君にだけ、教えてあげる。だから、そこに新しい穴を掘りましょうよ!」
興奮した様子の瞳に、良は静に話し掛ける。
「秘密の場所? それってひとみちゃんの秘密基地?」
「うん! そうよ。誰にもナイショの場所。ねぇ、そこに二人で穴を掘ろうよ! 誰にも秘密にして、二人だけでそこで遊ぶの!」
秘密の場所で、二人だけで秘密の遊びをする。
そのアイディアに、良の目は輝いた。
これからとても楽しい事が始まる。
その予感に、良の気持ちは高揚した。
それは、瞳も同じで、二人はキラキラしたお互いの目を合わせると、二人同時に小さく頷き、クスクス笑い合いながら学校から出て行った。
二人は肩を並べ、スキップしながら目的の場所を目指す。
二人のその姿は、とても微笑ましいものだった。
町を行く誰もが、二人を見て笑みを浮かべた。
『ねぇ、見てよ! あの子達を! 可愛いわねっ!』
『二人でスキップなんかして! 何て微笑ましいのかしら!』
誰もが良と瞳を見て、幸福な気分に包まれていた。
そうやって、幸せをまき散らしながら、二人は秘密の場所を目指して進んだ。
スキップに飽きたら二人で歌を歌い、歌に飽きたら、しり取りをして、そうして、やっと秘密の場所に二人は辿り着いた。
広い、緑に囲まれた公園。
その公園の、木々が沢山植え込まれた場所。
伸び伸びと枝を伸ばした桜や銀杏。
植え込まれた椿やツツジに囲まれ、表から見ると死角になるこの場所が瞳の秘密の場所だった。
「凄いね、ここ」
良はため息を漏らして言った。
「そうでしょう? 表からだと全然解らないの。ここなら誰にも見つからない。誰にも邪魔されずに穴を掘れるわよ」
瞳は小さな声でそう言った。
「本当にここに穴を掘って良いの? ひとみちゃんの大事な場所じゃあないの?」
最初のコメントを投稿しよう!