緑との邂逅

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 緑を爆発的に増やすメカニズムや方程式は、幼い頃に発見していた。それを形にするための機械は、細々と委託実験で稼いだ金を叩き、十年近くかけて素材を集めて組み立てた。後は、発動のための動力源を充填するだけである。  その動力源こそが人の魂なのだが、そうそう金で買えるものではない事は、初めから分かっていたことだった。  人の魂は古くては役に立たない。  身体から取り出して、輝きが消えぬ新鮮なうちに機械へセットする必要がある。期限はおよそ一両日中といったところか。  一度セットしてしまえば三年は保存がきく計算だが、これまで入手できた魂は一つきり。さすがのボクも、いくらこの街が魂を半分捨てている者共の巣窟だからって、殺人をしてまで手に入れたいとは思っていない。  となると、寄付を募るしかなく、この三年間で応じてくれたのは匿名希望、年齢不詳の女性の魂が一つきりだった。 「今後は、人工魂の研究に注力するか」  人工物は同じ魂と名がついていても、比べ物にならないぐらい低質で、動力源とするには物足りない。とは言え、電気をはじめとする一般的なエネルギーよりは力がある。ついでに言えば、かなり高価で、自作も困難だ。
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