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約半年ぶりの実家の中は、人が住んでいるとは思えない程閑散としていて、砂と埃がここかしこに積もっている。
親父は、寝室にいた。
確かに顔色が白く、体も微動だにしないが、死んでいるわけではないだろう。ボクはそっとその体に手をかざす。
ほら。
まだ魂を持ってるじゃないか。
結局また死んだフリ。こんなことして、ボクが驚いたり悲しんだりすると思っているのだろうか。それとも、自分が可哀想だと悦に浸っているのだろうか。馬鹿馬鹿しい。
ボクはこの研究を進める中で神殿にも通い詰め、人の魂の状態を確認できる術を身に着けていた。魂がそこに存在するか、無いか。魂としての力があるか、無いか、健常か、など。
魂特有の黄金の輝きを見据える。目を細め、一瞬ほっとしたような、苛つくような思いを唾と一緒に飲み込む。
せっかく来てやったのに親父は何も反応しない。
腹立たしさが膨れ上がって、そのまま帰ろうとした瞬間、壁際の空間にホログラムが現れた。
「やっと帰ってきたのに、もう行くのかい?」
あの女だ。
「お前、なんで親父の側にいないんだよ? 他に男でもできたのか?」
女の見た目は悪くない。十分にありうることだった。
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