緑との邂逅

4/11
前へ
/11ページ
次へ
 約半年ぶりの実家の中は、人が住んでいるとは思えない程閑散としていて、砂と埃がここかしこに積もっている。  親父は、寝室にいた。  確かに顔色が白く、体も微動だにしないが、死んでいるわけではないだろう。ボクはそっとその体に手をかざす。  ほら。  まだ魂を持ってるじゃないか。  結局また死んだフリ。こんなことして、ボクが驚いたり悲しんだりすると思っているのだろうか。それとも、自分が可哀想だと悦に浸っているのだろうか。馬鹿馬鹿しい。  ボクはこの研究を進める中で神殿にも通い詰め、人の魂の状態を確認できる術を身に着けていた。魂がそこに存在するか、無いか。魂としての力があるか、無いか、健常か、など。  魂特有の黄金の輝きを見据える。目を細め、一瞬ほっとしたような、苛つくような思いを唾と一緒に飲み込む。  せっかく来てやったのに親父は何も反応しない。  腹立たしさが膨れ上がって、そのまま帰ろうとした瞬間、壁際の空間にホログラムが現れた。 「やっと帰ってきたのに、もう行くのかい?」  あの女だ。 「お前、なんで親父の側にいないんだよ? 他に男でもできたのか?」  女の見た目は悪くない。十分にありうることだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加