傘とパフェ

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 俯いたままでいると、純ちゃんは突然鞄の中からジャケットを出して、私の肩にそっとかけた。その後、店員さんを呼んで、温かい紅茶を、と言った。 「玲ちゃん、パフェ食べきれなかったら残していいよ。なんなら俺引き取って食べるし。あ、寒くない? もうすぐあったかい紅茶来ると思うから、飲んでね」  純ちゃんはちょっと早口で喋った。いつもよりそわそわとしている気がする。それにしても、ジャケットに温かい紅茶って、わたしはお腹壊したと思われてるの? だとしたら、ちょっと恥ずかしい。  純ちゃんの様子はそれからもおかしくて、あの柔らかい髪をぐしゃぐしゃにしながら、うーんと唸っている。厚みのある前髪をかき上げて、想像していたよりも広いおでこが(あら)わになった。すごく失礼だと思うけど、なんだかおかしくて、つい吹き出してしまった。 「純ちゃん、いつもの純ちゃんじゃないみたい。おでこ広すぎだし。もう、おかしい。あはは」
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