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駅のほうに歩き始めてからふと純ちゃんが立ち止まる。
「店、どこらへん?」
そうだ、わたしはパフェを食べに行くんだった。慌ててスマホを出して、最近友達と訪れたカフェのページを開く。この前行ったときはすごく混んでて、うんざりしちゃったな。でも、待たされた分だけ美味しく感じてしまったから、店の思惑通りなのかもしれない。純ちゃんにお店の地図を見せると、数秒眺めた後、にっこりと笑う。
「おっけー、じゃあ早く行こう」
その言葉とともに、わたしの手が攫われた。純ちゃんの手はわたしのよりふた回りくらい大きかった。純ちゃんの横顔を見上げてみたけど、何を考えているのかはやっぱりわからなかった。わからないけれど、嬉しくて、わたしはその手を握り返した。
傘の内側と外側は全然違う世界みたいだ。地面を濡らす冷たい雫は、傘をリズミカルに叩く。ぱたぱた、とたとた。いつもは憂鬱な雨音が今日は楽しい音楽に聴こえる。
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