傘とパフェ

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 バニラアイスはこってりと甘くて、純ちゃんはあんまり好きじゃないからわたしにくれたのかな、とか考えてしまう。だって、純ちゃんのパフェ、さっきから減ってないんだもの。  そんなことを考えていたら、ふいに純ちゃんがわたしに手を伸ばしてきた。人差し指はわたしの唇に触れて、溶けたバニラアイスを拭っていった。そして、あろうことかそれを純ちゃんはペロリと舐めたのだ。少女漫画のヒーローにしかできないようなことをさらりとやってのける純ちゃんは、本当にずるい。  それなのに純ちゃんは何事もなかったみたいに、またパフェグラスの向こうに隠れてしまった。今のも純ちゃんにとってはなんでもないことなんだ。小さく息を吐いて、気持ちを切り替える。今この時間を楽しいものにしよう。純ちゃんが喜ぶことをしよう。 「純ちゃん、パフェ交換しない?」  意を決して防壁を飛び越える。桃パフェおいしいから、絶対純ちゃん喜んでくれるはず。そう思ったのに、純ちゃんはちょっと眉をひそめた。
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