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傘をさして雨の中を歩いていけば、さっき種を撒いてきた水たまりから透き通った太いツルが伸びていた。
そしてそこに透き通った大きな実をつけている。
近づくと実は水滴のようにふるふる揺れていた。
「今日は豊作ですね」
嬉しげに呟いて実をもぎる。
そのまま子供にさしだした。
「水の実です」
ちゅるりと吸い込むように水の実を食べながら、子供とその人はぶらぶら歩く。
「そういえばお前はなんなんだ?……妖怪みたいなものだとは合点がいくが、まだ正体を聞いていなかったな」
「わたしを気にかけてくれるんですか? ありがたいです」
そのひとはにこにこ嬉しそうだ。
「わたしはみずのかみさまですよ」
子供はしばらく考え込んだ。
「……龍神みたいなものか?」
「いいえ。この国ではね、”わたしたち”のようなものは誰だって神と名乗っていいんです。そして生まれたからには神なんです。ここはそういう国ですよ」
「全然分からぬ」
「そうですよね」
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