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「ほら、まりんさん、ちょっと降りて下さい。
明日も仕事です。
顔洗って、ベッドでラジオ聴かなきゃ。
その前に……」
とさ、とベッドに彼女を優しく下ろすと、透さんは洗面台に戻って、散らかってしまった物を元の位置に戻す。
白い雑種猫のまりんさんは、ぷるぷると軽く頭を振って体勢を整えると、まだ透さんがお片づけしている辺りを、うろうろ歩き回った。
週末である毎週日曜日の深夜には、透さんが好きな女の人がDJをつとめるラジオが放送される。
ベッドに横になって、どうやらユウキ ナツミと言う名前らしい女の人の放送をヘッドホンで録音しながら聴いた後、そのまま眠るのが最近の透さんのお決まり。
洒落たモノトーン壁掛けフォトフレームには、揃いのオレンジ色のスカートで、チョコレート色のふわふわセミロング「なっち」のポストカードが飾られている。
本棚の一番上には、写真集が2冊。
透さんは、なっちの優しい声が好きみたい。
ふわふわした笑い顔も、可愛いんだって。
時々私を膝に乗せて、背中に柔らかブラシをかけながらよくそう言ってる。
なんだか、猫みたいなんだって。
幸せそうに笑って。
だから日曜日の透さんは、とってもご機嫌。
癒し系ボイスって言ってるけど……でも人間のことは、私にはよくわからないわね。
あふ、とあくびをして、尻尾を揺らした。
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