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※※※※
「── ねえ、最近キレイになった?」
少しだけかすれた、まるで洗いたての生成の麻みたいに優しい声が、鏡ごしに不意に言った。
低めだけど、良く晴れたお陽さまの匂いがする優しい声で。
日付けが変わる、少し前の深夜。
洗面台の鏡に映った透さんは、泡だてた洗顔料で顔を洗っている手をちょっと止めて、綺麗な黒い大きな瞳でベッドの上を見ながら言う。
「えー、ああ、えっと、ごめんごめん。
キミは前から綺麗です。
でも最近、特にキレイになったな、って。
ねえ、もしかして最近僕の知らない内に、何か良い事があったの?」
水を流しながら。
照れくさそうに、ゆったりした透さんの声が、扉の開いたバスルームに反響した。
ベッドの上に寝転んだ彼女は、眠そうな顔を上げて無言で首を傾ける。
── 急に一体どうしたの?
まあ、でも悪い気はしないけどね。
そんな表情で。
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