鏡の前で彼女は

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 終電があるからと、みんなよりも先に純玲の家を後にした。  ベロベロの冬弥の世話は友達に託した。  駅から家まで道を歩いていると、もうすぐ家に着きそうな曲がり角で、スーツ姿のふたり組が見えた。  ひとりは背が高い男。もうひとりは、後ろ姿でもわかる。朱莉だった。  足が止まって動かなくなった。  朱莉は微かに頬が赤くなって、男と談笑している。  目を凝らすと、背の高い男はパンフレットを拾っていた上司だということがわかった。 「かっこいい人」 「仕事ができる人」  彼がどれほど魅力的な人か、男の壮志郎から見てもわかる。  その男が言ったセリフが、そのセリフだけが、はっきりと聞き取れた。 「最近、キレイになった?」  かっこ悪いと思いながらも、速足で朱莉に駆け寄った。 「朱莉」 「あ。壮志郎」  壮志郎に気づいた朱莉は、頬を上気させて振り向いた。  会わない間にすっかりニキビは治りきっていた。  それどころか、肌はきめ細やかに、外灯の下で艶めいて見えた。  思わず壮志郎は自分の着ていたパーカーを朱莉の頭にかぶせた。  
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