鏡の前で彼女は

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「朱莉ちゃんの弟さん?」 「ここまで送っていただいてありがとうございました。あとは俺が送るんで大丈夫です」  有無を言わさず言って、「じゃあ……」と言って男が歩き出すのを見届けるまで、パーカーを抑える手を緩めなかった。  すっかり男の姿が見えなくなってから、朱莉がぷはっと息を吸い込んでパーカーから出てきた。 「ちょっと!私のこと殺す気!?上条さんもせっかく送ってきてくれたのに」 「付き合うの?」 「はい?」 「あの男と付き合うの?」 「何バカなこと……」 「やめろよ」  朱莉はハッとなった。  壮志郎が泣きそうな顔をしている。  こんな顔をした壮志郎を見るのは、長い付き合いで初めてだった。 「やめろよ。それ以上綺麗になるな」 「何言って……」  朱莉がそう言いかけたとき、壮志郎の腕が朱莉の首の後ろに回った。  壮志郎な鼻先がくっつきそうなくらい近くにある。
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