鏡の前で彼女は

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「綺麗になったよ、朱莉。他の誰にも見せたくない」  唇がふと近づいて、すぐに離れた。  壮志郎は顔を隠して後ろを向いた。 「ごめん。彼氏でもないのに、こんなこと」 「じゃあ、彼氏になってくれる?」  朱莉はいたずらっぽい笑みを浮かべている。  仕事を始めたばかりの頃の、疲れた顔じゃない。  自信があって、前向きで、綺麗だ。 「本気?」 「冗談だと思ってる?何年も前にもらったぬいぐるみを後生大事にしてる女が、そんな冗談言う?」  首を振った。  そして、一歩朱莉に近づいた。 「俺、頑張るから」 「何を?」 「朱莉がどんどん綺麗になっても大丈夫なように」  再び壮志郎の鼻先が朱莉の鼻先に近づいた。  そして、今度こそ唇が触れた。
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