最近アイツは

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 思わずコーヒーを吹き出しそうになるのをこらえて、その姿を凝視した。  朱莉はビジネスバックとは別に、重そうな紙袋を二つ抱えて歩いていた。  重たそうによたよた歩いている姿は、壮志郎の前でお姉さんぶっている朱莉とは全然違う。  と、突然に片方の紙袋の底が抜けて、中に入っていたパンフレットらしきものがまき散らされた。 「あっ」  思わず立ち上がった壮志郎に、周りの全員が注目した。  朱莉は慌ててパンフレットをかき集めている。  手伝わなければ。  壮志郎が席を立とうとしたとき、朱莉のそばにもうひとりしゃがみこむ人がいることに気づいた。 「壮志郎?どうしたの?」  純玲が言って、壮志郎の視線を追う。  朱莉の傍らにしゃがみこんだその人は、素早くパンフレットをかき集めると、自分の持っていた紙袋に入れた。男の人が持っている紙袋には、朱莉の会社と同じロゴが入っている。  会社の同僚か、上司なのだろうか。  細身のスーツを着こなした、さわやかな笑顔の男性だった。  朱莉が頭をさげて、笑顔を向ける。  その笑顔に、なぜか胸が痛くなる。  そうか。そうだったのか。
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