背理的ハッピーエンド

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 「愛に理屈はない」と、人は言う。  愛について完璧に説明できる理屈などなく、人と人との不思議な結びつきは、もはや「運命」というしかないのだと。  だとしたら愛は。運命は。  理屈よりも強いものなのだろうか。 「由可子(ゆかこ)ちゃん、一緒に帰ろう?」  その声に、私は考え事をやめ、帰り支度を済ませたカバンを手に持った。そして少し微笑んで、話しかけてきたクラスメイトに返事をする。 「ごめん。今日、ちょっと予定があって」 「そうなんだ? じゃ、また明日ー」 「うん。また明日」  その子たちを見送ったあと、誰もいなくなった教室の真ん中で、私は一人、ポツリと呟く。 「とっても大事な予定が、ね」          
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