まね猿

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俺の作品がネットで炎上してから数日後のこと。 部屋に一匹の猿がいるようになった。 (よう、にいちゃん。そんなふてた顔をしなさんなよ。) 1LDKのアパート。 糸で口元を縫った猿は目を覆いながらそう告げる。 (『来るものは拒まず、去るものは追わず』  こりゃあ誰の言葉だったかねえ?) 猿は白濁した目でこちらを見る。 (…まあ、にいちゃんも外聞なんか気にしなさんな、  自分で心血注いで作った作品が真似っこなんて言われたら、  誰だって腹がたっちまう) 暗い穴と化した両の耳。 そこを塞ぐ猿はニヤリと口元を歪ませる。 その耳は果たして聞こえているのか。 いないのか。 見えず、聞けず、口も開けない猿。 …そんな猿が、いつの間にか部屋に入り込んでいた。
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