3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
俺の作品がネットで炎上してから数日後のこと。
部屋に一匹の猿がいるようになった。
(よう、にいちゃん。そんなふてた顔をしなさんなよ。)
1LDKのアパート。
糸で口元を縫った猿は目を覆いながらそう告げる。
(『来るものは拒まず、去るものは追わず』
こりゃあ誰の言葉だったかねえ?)
猿は白濁した目でこちらを見る。
(…まあ、にいちゃんも外聞なんか気にしなさんな、
自分で心血注いで作った作品が真似っこなんて言われたら、
誰だって腹がたっちまう)
暗い穴と化した両の耳。
そこを塞ぐ猿はニヤリと口元を歪ませる。
その耳は果たして聞こえているのか。
いないのか。
見えず、聞けず、口も開けない猿。
…そんな猿が、いつの間にか部屋に入り込んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!