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(…芋洗いの猿って知ってるか?
一匹の猿が芋を洗ってると周囲の猿にもその方法が伝播する、
で、一定数を超えるとなぜか見聞きもしてないのに、
離れた他の島でも同じことする猿が出てくるってヤツだ)
いつしか近寄ってきていた猿が、
両の目を手で覆いながら俺に笑いかける。
(ようは、似たような環境下の中で同じ時代に生きていると、
離れた場所でも似た考えを持つヤツが発生しやすいってことだ。
互いに接点がなくても同時発生する偶然、
…その確率に、お前さんは運悪くあたっちまったのさ。)
…偶然?
では、この状況は何なんだ?
俺は猿を睨みつける。
来月の家賃が払えない。
次の仕事が入ってくる見込みもない。
転職しようにも、
次の就職口が見つかるかどうかも怪しい。
…それに、俺の住所は世間に割れている。
悪評が上がると同時に俺の住所を突き止め、
周囲に公開する人間が出始めた。
その結果、郵便受けには身元不明の投書が殺到し、
開けば罵倒の言葉が大量に羅列している。
…これで、どう生きていけばいいのだ。
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