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閉鎖された遊園地。
展望台を兼ねた、
おもちゃのような塔の屋根のてっぺんに俺は座る。
…そう、所詮はみんな他人事の真似ごとだ。
先になるか後になるかの違いでしかない。
似た流れ、似た出来事。
それに巻き込まれ、
恨みを持つ人間はごまんといるはずだ。
…もう、俺に語りかける猿はいない。
いや、いなくて当たり前の話。
あれは俺の中の猿だったのだ。
キャラクターが認められず。
フラストレーションの果てに生み出された、
自己顕示欲の妄想。
だからあの猿の言うことは俺の言うことであり。
猿の行動は俺の行動なのだ。
俺は、もう見えない目で周囲を見渡す。
穴と化し、聞こえない耳で悲鳴を聞く。
そして、語れない口で…
切り裂かれた喉元からひゅうひゅう声を上げる。
(所詮は世の中、サル真似だ。
俺と同じ存在がうじゃうじゃいるだけなんだ。
嫌なら見なければいい、聞かなければいい、声に発さずとも、
俺の周りにいれば、誰もが不幸になって死んでいくんだから…)
そして、塔のてっぺんに立つ俺は、
身体中を覆う黒い毛を揺らしながら、
混乱と不安の渦巻く遊園地の中で、
ひとしきり声にならない笑い声を上げ続けていた…
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