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〖その1-うら〗犬猿の仲の犬と馬。
「明後日の合同演習の書類は出来ているか」
魔術省の部署に未だ提出されていない書類を貰いに来たら、女の事務官達がこっちをチラチラ見てた。部下だったら「手を止めずに仕事をしろ」と、即注意ものだ。
だが、そんな女性の事務官の口頭注意よりも酷い女がいた。
『あぁ…、そう言えば明後日でしたね、、。これが終わったらやりますから、もうちょっと待ってて下さい』
「・・・・・待つとは、どのくらいだ?」
血圧が上がって、殴りそうになった。
それをぐっと我慢したため、眉間に皺が寄る。
周りの女も俺と同じ気持ちだったのか、顔を真っ赤にさせてた。
一人心でぼやく。
"この女とは、絶対馬が合わない"
目の前の女の名は、メリッサ・コンティ。年齢は知らない。貴族でなく平民。
顔は普通より上・・・らしい(他の騎士仲間が言っていた)。俺は好みではないが。
そして、この国の魔術省のホープと呼ばれている。いや、近隣国の魔術のホープかもしれない。
何故なら、合格するのに何年もかかると言われている魔術学校に年少で一発合格。しかも、卒業するまでずっと首席だったというのだから、たまげたものだ。
この部署で下っ端のように見える女が、実際は古株。
大規模な合同演習(王も同席)などがあれば、失敗は許されない為都合よくこき使われている。
早朝の自主鍛錬時に、この女が仕事場に行くのを何度も見た。
夜の自主鍛錬時に、一人で帰っていく女を何度も見た。
昼の休憩時には、同僚らしい男の横でこう叫んでたのを何度も見た。
「絶対出世してやるーーっ!」
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