〖その1-おもて〗犬猿の仲の犬と馬。

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嫌味を言って出て行ったガチ公を見ながら、今度は私の眉間に深い皺が寄った。 明後日に合同演習があるのを忘れていたのは確かに私が悪かった。 だが、私も忙しいのだ。 私の出自は平民だ。貴族ばかりの魔術省では珍らしい。 そして自分で言うのも何だが、私は女の身で魔術省随一と言われるぐらいのホープ。 よって、そういう私をやっかむ人間は少なくない。毎日、虐めのように仕事を押し付けられている。 私の生い立ちをざっと説明するとこんな感じだ。 生まれた時に測った魔力量が半端なかった為、物心ついたと同時に特待生で年少の魔術学校に入学。しかも、飛び級であっという間に大学まで行って卒業した。 これはその卒業した学校の先生談の一例だ。 「あの子にもう教える事はない。今後私が教えを乞うだろう」 素晴らしい先生のコメントである。 私メリッサ・コンティ23歳。独身。女の結婚は20歳まで。よって行き遅れである。 だが女は捨てたが、魔術省での出世は捨てていない。爵位と言う後ろ盾がないため、只今馬車馬のように働いて上り詰めてる最中だ。 今開発してる魔術の術式が成功すれば、先輩からのやっかみを受ける事もなく、逆にこき使える立場になるだろう。 『………ハァ~、先に合同演習の魔術展開の手順をぱぱっと作成するか、、、。今日中にガチ公の机に置いておけば、文句も言われないだろうし』 そう言って書類作成に取り掛かったメリッサだった。
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