第一話

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第一話

星花(せいか)を君に。」は、アニメ化までされた大人気少女漫画である。  主人公【モニカ・ルーベンス】は庶民ながらも高い魔力を持ち、その才能が認められて学院に入学したところから物語が始まる。  初めて自分を認めてもらえたと思っていた主人公を待っていたのは、庶民という身分をよく思わない貴族達からのいじめだった。  そのいじめを誰も止めようとせず「自分なんていない方がいいんだ…… 」と、一冊の本を抱きしめながら泣く主人公の涙を止めたのは、1人の男の子だった。  そしてのちにその男の子は国の王子様と分かり、モニカの人生は大きく変わっていくことになる……   ★★★★★★★★★★★ 「今日は待ちに待った『星花を君に。』アニメBlu-ray完全生産限定版の発売日だー!! 」  少女は朝起きてすぐベッドの上で叫んだ。そして意気揚々と、予約していたお店に向かう準備をする。 「お母さん! 今からCD屋さん行ってくるね! 」 「こらあんた、そんな格好で出かけるつもりなの? 」  少女は玄関の横にある姿見の鏡で自分の姿を見る。いつもなら服選びには少し時間をかけるのだが、今は早く取りに行きたくて仕方がなく、上下ジャージと女子高生にはあるまじき格好だった。 「い、今はそんなことどうでもいいの! 行ってきます! 」  勢いよく玄関の扉を開けて、そのまま自転車で全力疾走する。もちろん立ち漕ぎである。  この少女は一番何が好きかと聞かれれば、真っ先にこの少女漫画を言うだろう。  漫画は会話をすべて暗記する程何周も読み、アニメは家に一つしかないテレビでずっと見続けた結果、テレビ権を剥奪されそうになったこともある。 「このためだけにバイトを頑張ってきて、自分用のテレビも買った…… 準備は満タンだ!! 」  坂を全力で下りながら、満面の笑みを浮かべて言う。この先の角を右に曲がれば、CD屋さんだ。そして受け取って家に帰れば…… ふふん。  私のオタクロードが待っている!!   そう考えている内に曲がり角が近くなり、坂を下ったスピードで曲がると危険なので緩めようとした。  しかし、その瞬間左にある公園から一人の少年が道路に飛び出してきた。このままでは少年にぶつかってしまうと思って、急ブレーキをかけるが自転車の後輪が浮いてハンドルから手を放してしまった。  その影響で宙に浮いた少女の体は、右の角から出てきたトラックに轢かれてしまう。  うそ…… 私は轢かれちゃったの?   宙に浮き続けている状態のまま、かすかな意識を保ち続ける。  いやだ…… 死にたくない……  声に出せない悲痛を目の前のトラックに訴える。そして意識がなくなる直前に。少女は最後に思いを綴る。  もう一度だけ「星花を君に。」がみたいよぉ……  ★★★★★★★★★★★  目が覚めると、白い天井の部屋にいた。否、天井だけではなくこの部屋…… というにはあまりにも広すぎるこの空間は全体が白かった。  ……ここは天国なの?  「ちがうちがう、ここはわしの部屋じゃよ。」  自分の心の声に返答されるという理解できないことが起こった。その声がする後ろを向くと、一人の老人が立っていた。  少し小太りの…… おじいさん? 「だ、誰が小太りじゃ! 失礼な奴じゃな! 」  二回も心の声が読まれたことに驚く。ますます何が起こっているか分からなくなった。とりあえず目の前の人物がどちら様なのか聞いてみることにした。 「あなたは誰ですか? 」  その言葉を聞いた老人は、自分の長く白いひげを愛でる。 「わしは神様じゃ。」  顔を右上に上げて、ドヤっとした表情で言ってきた。  ……何で嘘をつくんだこのおじいちゃんは? 「嘘ではない本当じゃ! ほれこれを見てみよ! 」  そう言って老人は右手に持っている杖で、地面をコンッコンと二回叩く。すると白い空間全体がいつの間にか、空を飛んで居るかのような風景に変わった。下には住宅街が広がっている。 「これは一体…… ?」 「ここは、お主が住んでいた町の上空じゃよ。」 「!? 」  私は手を床につき下の住宅街を凝視する。たしかに、あのショッピングモールの形には見覚えがある…… あのマンションも……。 下を見れば見るほど、その言葉が現実を帯びてくる。じゃあ、わたしの家はこっちにあるはずだと思い、その方向に四つん這いで移動しようとした。 「こらこら、わしからは離れるでない。下に落っこちてしまうぞ。」  その言葉を聞いた瞬間、怖くなっておじいちゃんの方へすぐ戻った。  そんな私を見て老人は「ほっほっほ、冗談じゃよ。」と言ったので、グーで弁慶の部分をコツンと軽く叩いてやった。  痛がるおじいさんはまた杖をコンッと1回叩き、住宅街の中にある交差点の風景に変わった。  ……ここは、私がトラックに轢かれた場所? 「そうじゃ、お主はこの右の角から出てきたトラックに轢かれて即死したんじゃよ。」  そうか、やっぱり私死んじゃったのか……   その事実を見せられた私の心は言い表せないような思いでかき乱れていた。このまま私は消えていくのだろうか、自分にはどうすることもできない事態に直面し涙が溢れ出す。  そんな私に一つの未練が訴えかけてきた。  ……ちょっと待って、私まだやり残したことがある。 「辛いじゃろうが、これは紛れもない事実。受け止めてほし…… 」 「神様お願いがあります!! どうか私が消える前に『星花を君に。』アニメBlu-ray完全生産限定版を見させてください!! 」 「今、何と言った? 」  私は額を地面につき、一番誠意ある姿勢DOGEZAをして神様に懇願した。その行動があまりのも想定外だったのか老人は困惑していた。 「『星花を君に。』Blu-ray完全生産限定版です! それを見るために今まで生きてきたといっても過言ではありません!! 」 「とりあえず、その土下座の姿勢をやめるのじゃ。全くお主は本当に変わっておるの…… それはこれのことかな? 」  杖を床にコツンと一回叩くと、老人の左手に男女の絵柄が書いてある大きな箱が現れた。それは私が望んで止まなかった物であった。  少女は即座に立ち上がり、おじいさんからその箱を奪い取った。 「これは…… 『星花を君に。』Blu-ray完全生産限定版だ!! 会いたかったよおおお! 」 「お主その長い名前を毎回言うのか? 略してもよかろ…… 」 「テレビ。テレビを出してください! 」  左手でまるで赤子ように箱を抱きしめ右手を相手に差し向ける。もう少女には老人の言葉など耳に入っていない。その箱にもう目が、心が釘付けなのである。  それを悟ったおじいさんは、いつものようにコツンと鳴らし64型テレビを出した。もちろんブルーレイレコーダー付きである。 「じゃあ…… 取るよ…… 」  傍から見たら変態としか思えない発言をしながら、箱についているビニール取る。ビニールが取れた後はそっと、慎重に、息を沈めて、箱を開けにかかる。余りにも緊張感を持って接している少女を見て老人は「爆弾でも触っているのか? 」と不思議に思っていた。 「これが、私の宝石箱……!!」  その箱を開けた先に待っていたのは数々の特典とアニメBD… 少女はそんな宝石の中から一枚の円盤を取り出す。 「これが…… アニメの後日談を描いた新作映像……! 」  それはこの豪華特典版にしか入っていない最終回以降の主人公が描かれた30分のアニメ円盤だった。私がまだ見たことがない『星花を君に。』がここに……!  しかし少女はその円盤をそっと箱へと戻し、別の物ををブルーレイレコーダーに挿入した。  その光景を見た老人は疑問に思った。 「そのDVDから先に見ないのかね? 」 「アニメは最初から見るに決まっているじゃないですか。」  さも当たり前のことのように言われた老人は「そういうものなのか…… 」と理解を半ば諦めた。  そしてテレビには映像が流れ始めた。今回はすべての映像が加筆修正されており、見慣れたOPのはずがまるで初めて見た時のような高揚感が芽生えた。  そこには魔法のファンタジー世界が広がっており、中世の街並みのある都市や魔法を使って生活している住民たち、そして魅力的なキャラクター達。なんて素敵なんだろうか…… 「この男は自我が強すぎんか? もう少し協調性を持った方が…… 」 「うるさい、静かにして。」  ひっそりと横に座って一緒にアニメを見ていた老人が会話をしようと持ち掛けたが、バッサリと切られてしまいしょんぼりしていた。  その後もキャラクターたちの物語が綴られていき、思いを噛みしめながら見続けた。  少女は、最後の円盤をブルーレイディスクに挿入した。その30分間は何にも代えがたい喜びや幸福感に満ち溢れていた。そして終わった頃には涙があふれかえっていた。どういう意味の涙なのだろうか…… 自分ではよくわからなかったが、決して悲しいものではなかった。  すると老人が横からそっとハンカチを乗せた手が差し出してくれた。そのハンカチを受け取り涙をぬぐい、笑顔と感謝の言葉を添えて返した。  私は別の円盤を入れるために箱へと手を伸ばそうと…… 「ちょっと待つのじゃ。その箱に伸ばしている手はなんじゃ? 」  したが、老人に手をつかまれる。 「何って、もう一度初めから見るためですけど。」  当然じゃないですかと言わんばかりの顔をする少女にため息をこぼす。 「そう言うと思ったわい…… その前にお主に言わなければならないことがある。なぜここの連れてこられたかということだ。」  先ほどとは打って変わって、真剣な表情でこちらを見る。忘れていたけど、確かに何でだろう。その言い方だとまるで私が選ばれてここに来たみたいな感じ…… 「その通りじゃ。お主が死んだときわしがここへ連れてきたんじゃ。」 「誘拐したんですか、警察呼びますよ? 」 「その言い方はやめんか! ちゃんとそれには理由があるのじゃ。」  老人はコホンコホンと咳払いをして、私に対して向き直す。 「お主には転生してもらう。」  なんて言ったこのおじいさんは?  「だから転生じゃよ。お主には別の世界に行ってもらい過ごしてもらう。」 「……なんで私なんですか? 」  老人の言葉を理解した。自分の世界にはもう戻れないことを。そのうえで疑問に思う。なぜ私なのだろうかと。言ってはなんだが私にはあまり取り柄がない。勉強も中の下だし運動なんてもってのほか、友達も3人しかいない。  けど私が選ばれた理由はとても気になる。もしかしたら気づいていない取り柄があったのかもしれないと。  どきどきと心臓が波打ちながら老人を見つめる。その表情を見て悟ったのか視線を少女からずらした。 「面白い子だと思ったからじゃよ。」  ……は? 「普通、死に際には誰しもが死に恐怖するものじゃ。しかしお主は違った。何と思ったか覚えておるか? 『もう一度だけ「星花を君に。」がみたい。』という自分の願望を思っていたのじゃ。そんな人間はここ何百年の間見なかったぞ! それはそれはわしにとって実に面白いことであった。そこで我ら神々の権限である『転生』をそなたにプレゼントしようと思ったのじゃ。」  意気揚々と話す目の前の老人を見て少女は思った。  私馬鹿にされてない? 後、面白い私に転生をプレゼントする意味は何? 「転生をプレゼントっておじいさんには何かいいことがあるんですか? 」 「そなたの生活を見て暇を潰すことができる。」  あーなるほど、と私は理解した。このおじいさんは私の送る人生を描いた漫画を見て、暇を潰そうとしているのだと。そしてその答えはもちろんNOで…… 「本当に断っていいのかの? お主からしたらこれ以上ないプレゼントだと思うが。」  悪い顔をしながら老人は私に問いかける。何を企んでいるんだと疑っているのを主張する様に細いの目をして睨み返す。 「どういうことですか? 」 「お主にはそのアニメの世界に転生させてやろうと思っているのじゃがな。」 「えっ、ほんとに!? 本当に言っているの!? 」  少女はまたもやすぐにその場から立って、老人の肩を手でつかみ前後に揺らした。 「本当じゃから、揺らすのはやめてくれんかの。」  声が揺れながら訴え、少女はすぐに手を離した。そしてその目は希望に満ち溢れていた。 「それで転生っていうと、私という存在が新たにこの世界に加わるということでいいんですか? 」 「転生についてやけに詳しいの…… 本来であればそうなのだが今回の場合は存在している世界ではなく、創造物の世界であるからそこに登場するキャラクターを選び転生する方法になる。」 「待ってください。ということはこの登場人物に私が入れ替わるということですか? 」 「そういうことじゃ。この黒く長い少女なんてどうじゃ? 中々に美しい顔立ちであるが…… 」 「その子は主人公です。私が入れ替わってしまったら、物語がつぶれてしまいます。却下で。」  少女は腕を前にクロスさせて断固反対という思いを体で表現する。 「じゃ、じゃあこの金色の髪を左右に結っている少女はどうじゃ? きらびやかな衣装を身に纏っているが…… 」 「あ、そのキャラクターはこの作品で一番悪い女、いわゆる悪役令嬢ですね。本当なら私が変わって主人公のいじめを止めたいですけど、そのイベントもなくてはならないものなので却下で。」 「この赤髪の少年なんてどうじゃ! ものすごく気品にあふれておるし! 」 「……何を言っているんですか? 男になるわけないじゃないですか。」  どうやら私の転生先を決めたいらしいが、こんな重大な選択を他人に任せるわけにはいかない。それに全然見る目もないし…… やはりここは、主人公の恋愛に干渉せず、それでもってその様子を近くで観察できる立ち位置のキャラクターが一番いい。となると、学園内で平穏な生活を送れる立場のモブに転生してするしかない! けど、モブの中で名前が付いている者は少なく、ほとんどが無名だ。これは慎重に選ばないと…… とりあえずアニメをもう一回見直すか。 「残念ながらそれはできんよ。言ってなかったがあまりお主をこの空間に長くいさせることができないのじゃ。」 「じゃ、じゃあ転生先はどうするんですか……? 」  老人が少女の方へと近づき、肩に手でポンポンと叩く。その表情は微笑みに満ちていた。  もしかして… 「観る目のないわしが決めてやるから安心しなされ。さあ行くのじゃ少女よ! 」  その瞬間、少女の後ろには青いブラックホールが現れ、体が引き寄せられる。やばい、このままだと吸い込まれる! 「ちょっと待って、ほんとに待ってください! 私が決め…… 」  必死の顔で引き寄せられる少女を見て、老人は悪い笑みを浮かべて言う。 「新たなる生を受け、その人生を謳歌しなさい! さすれば何時にはこれまで以上の幸福が訪れるであろう! 」  どや顔で放ったその言葉の後に、ブラックホールの吸引力はさらに増して、もう抵抗すらできなくなった。 「おじいさんのばかやろうー! 」  その言葉を最後に、ブラックホールへと少女は吸い込まれた。  ★★★★★★★★★★★  目を開けるとそこには、先ほどの空間のような質素さは一切ない、芸術的な模様が描かれている天井があった。自分の頭の下には枕があり、どうやら私はベッドで寝ているようだ。  それにしてもこのベッドふかふかだな…… もう一回寝てしまいそう。 「お嬢様、お目覚めになられましたか。 体のお加減はいかがですか? 」  すると、ベッドの横にいたメイドの格好をした女性が起きた私を見て言った。 「はっ、はい大丈夫です! 」  知らない人からの咄嗟の問いだったため驚いて、少し大きい声で返事をしてしまった。  この人、メイドさんだよね? メイドさんがいるって事は、私は貴族の娘に転生したんだろうか。   だとしたらおじいさんナイス! 庶民だったら学園に通えるかわからなかったからね。もしや見る目が合ったのでは。  そう考えていると、部屋のドアが開き、一人の男の人が入ってきて、そのまま、私のほうへと向かってきた。 「アンジュ、体調は大丈夫か? 」  心配そうな目で見つめられる。どうやら私は体調を崩していたらしい。そして私の名前はアンジュと言うのか…… あれ、どこかで聞いたことあるような? 「はい、なんともないです。」  その言葉を聞いて男性は胸に手を当て、ホッとしたようだった。 「そうかそれは良かった。メイドよ、これから私は侯爵殿が主催の食事会に行く。その間アンジュの看護を任せたぞ。 」 「承知いたしました。」  侯爵とご縁があるってことは、相当高い身分なのかもしれない。ただそこで疑問に思った。あまりにも自分に都合がよすぎるのだ。こんなモブをあのおじいさんの目で見つけるとは思えない。それにアンジュの名前にも少し引っかかる。  男性がこの部屋を去った後、ベッドから降りて姿見の鏡で自分の姿を見る。そこに映ったのは長く綺麗な青髪で、可愛らしい顔をした少女が立っていた。私は自分の頭に一人の女性が浮かび上がる。まさか…… ! 「メイドさん、一つ質問いいですか? 」  その言葉遣いを不思議に思ったのか少し戸惑っていたが、「はい、なんでしょうか? 」と返してくれた。 「私の名前を教えていただけませんか? 」  メイドさんの表情が焦ったものに一変した。  「お嬢様、どこか体調が!? 」 「い、いや! 全然ピンピンとしているんですけど、メイドさんから私の名前を聞きたいなと思って。あはは…… 」  目を反らして、乾いた笑いでごまかす。やっぱり変な質問だったかな。けどこのことを知るのと知らないのではこの先の行動が変わってくる。それほど重大なのだ。  メイドさんはなんとかわかってくれた様子で、私の名前を言ってくれた。 「お嬢様のお名前は『アンジュ・ローミニア』、今年、齢4歳となられるこのローミリア家のご令嬢です。」  その名前を私は知っている。その人物は決して主要人物ではなくモブである。しかし、モブの中でも悲惨な運命を辿り、一つの特徴がある。  アンジュ・ローミリアは悪徳令嬢の取り巻きであり、主人公をいじめに加担していた一人であった。しかし王子様によって公の場でそのいじめが告発されたことにより、悪役令嬢を含むいじめに加担した生徒は身分をはく奪の上、国外追放となる。  これがどういうことかというと、私はこのままだと主人公の恋愛を最後まで見届けることができない。それは絶対にあってはならないことだ。ならば、変えるしかない。【アンジュ・ローミリア】の辿る運命を。  少女は手を握りしめ決意を固めた。自分の目的を果たすための決意を。  それにしても、モブの名前はアニメには一切出てこないのに、数少ない名前がついたモブを選んだなおじいさん。私のこのキャラクターに対する印象というと…… そういえば、おじいさんが私に提案してきたキャラの基準って確か、あっ……  少女は、なぜこのキャラクターが選ばれたのかを理解した。そして手を強く握りしめるが、それは先ほどの意味とは違う憤りという意味だった。  そして老人がいる空のかなた上に向けて青髪の少女は叫ぶ。 「モブの中でも少し作画がいいキャラってだけで選んでるんじゃないよ! このばか神様!!! 」  その声は屋敷中に響いたという。  ★★★★★★★★★★★★ 「な、なぜバレとるんじゃ……?」  白い空間から少女を見ていた老人は、自分の選んだ基準が当てられて驚きを隠せずにいた。 「本当に不思議な少女じゃの…… やはり君を選んでよかった。」  そして神様は、突如として周りに現れた無数の本棚から1つの真っ白な本を取り出した。そして真ん中に位置した豪華な装飾が施された椅子に座る。 「さてこれから君の歩む物語を…… 私の夢を見せてもらおうじゃないか。」  まるでこの時をずっと待ち望んでいた子供様な無邪気な顔で神様は言って、真っ白な本を開く。その瞬間、本の表紙にとある文字が刻まれた。 『星花を君に。幼年期編』
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