お父さん

1/16
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 私は父親が嫌い。  何か気に入らないことがあるとすぐ殴るし、酒癖が悪い。父親が殴る時はいつもお母さんが庇ってくれたから、私が殴られたことは一度もなかった。でも、お母さんがいっぱい殴られるのを見るのがとてもつらかった。  離婚していいよと言ったのも私。  お母さんは、片親になってしまってごめんなさいと言った。   離婚する前からお母さんはいつも謝ってばかり。  自分であの人を選んで結婚したのにどうして謝るの? 私はお母さんが謝る言葉をもう聞きたくなかった。  私が生まれなきゃもっと自由になれた? 再婚だってできたかもしれない。  そう思うと、私がここにいる意味は何なんだろうと考えてしまう。  だから私は、突然新しいお父さんが来ると言われた時、何それと思った。  もう誰とも結婚しないって言ってたくせに。  お母さんは同窓会で再会した元カレと再婚すると突然言い出したのだった。    数日前、お母さんが同窓会に行くのに迷っていた時、私は背中を押した。たまには息抜きもいいんじゃないって。  「初恋の人に会えるかもよ」なんて茶化したけど、それがいけなかったんだろうか。  しかもそいつの名前が浩信(ひろのぶ)なんて言うから最悪だ。  私の名前は弘美(ひろみ)だ。まさかお母さん、元カレの名前を私につけたんじゃないかと思ったから。  お母さんは、たまたま、元の名字佐々木にちょうど合ってるから付けたって言うけど、そんなの信じられない。  私は絶対にそいつの本性を暴いてやると思った。  どうせ前の父親みたいに結婚したら豹変して、私に虐待とかするに決まってる。もしかしたら性的虐待もありえる。  そいつは私が認めないと再婚しないなんて言ってるみたいだけど、どうせ口だけだ。絶対一生認めてなんかやらない。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!