お父さん

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 パチパチと拍手の音がした。おばあさんだった。「おめでとう。泣けるわね」と言った。 「別におめでたいことじゃないから。単にこれから一緒に歩んでいくっていう意思表示だろ。式を挙げるわけでもないし。やっとスタートラインってだけで、これからの生活の方が十倍も二十倍も大切なんだから」  それに対しておばあさんはちょっと呆れて言う。 「あんたはいつもそうやって水を差すこと言う」 「水を差してるんじゃなくて、元々俺たち三人の問題だったんだ。母さんとか周りは関係ない。結婚って言うのは家の結びつきだから、それはこれからの話だよ」 「こればかりは浩信の言う通りだろ。結婚してはい終わりじゃないんだ」  とおじいさんが言った。おじいさんが話しているのを初めて聞いた気がする。  これからお父さんの家族とも仲良くしていかないといけないんだなと思った。そこで、 「遅くなってごめんなさい」  と私が言うと、謝る必要なんかないとお父さんは言った。  おばあさんもおじいさんも優しかった。私はお父さんと本当の家族になれてよかったなと思った。
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