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車通りが多い道が嫌だと言うので、線路沿いの広い道から少し外れた小道を歩いた。
途中並木道があったり、公園を通り抜けたり、小さい森もあった。
そいつはいちいち立ち止まって、カブトムシがいそうな木とかを指差す。やたら木に詳しかった。それから虫にも。私は虫は苦手だったけど、カミキリムシとかはちょっとかわいいと思った。
「普段通ってる道でも、違う場所に目を止めてみると、新しい発見があったりするもんだよ」
とそんな風に言う。
私はふーんって答えたけど、ちょっと感心しちゃったりなんかして。
吉祥寺に着いたら、私たちは適当にウィンドウショッピングをした。
別行動でもいいと言ってもそいつはついてきた。服とか興味なさそうなのに。
「これどうかな?」
と、試しに聞いてみると、
「似合うよ」
と言われた。
「ちょっと、そんな歯の浮くようなセリフ言わないでよね」
「本当にそう思ったから言ったのに」とため息をつく。
「買ってあげたいけど、持ち合わせが」
と言いながら財布を見ているのを見て私は笑っちゃった。
別に買ってほしくて連れてきたんじゃないのにと思った。
また、私がかわいいベルトを見ていると、
「これぐらいなら」
と言って払ってくれようとする。
「それってご機嫌とり?」
と突っ込んだら、
「欲しそうにしてたから。いらないならいいよ」
とか言うし。
私はちょっとむっとしながら、「じゃあ買って」と言うと、ちゃんと買ってくれた。一応ありがとうと言っておいた。
お礼ってわけじゃないけど、そいつの行きたいとこを聞いてみたら、CD屋だと言う。仕方ないから付き合ってあげた。
クラシックのコーナーでずっと物色してるから、ちょっとおかしかった。「こんなの出てたのか」とか「だいぶ安くなったな」とか、一人でぶつぶつ言っている。
「買わないの?」
と聞くと、整理しないと置ききれないし、ネットの方が安いからと言う。そんなにいっぱい持ってるのかと驚いた。
CDの話を振ると、嬉々として話し出す。私にはわからないことだらけだったけど、そいつは今度お勧めのものを持ってきてくれると言った。
帰る途中にふと思った。私たちって何に見えるんだろう? 親子? 援交とかに見られてないよね?
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