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夏休みに入る少し前、隣のクラスの名前も覚えていない女子が、私に向かって言ってきた。
「あんた先生の何?」
「は?」
先生って誰のことかわからなかったし、意味がわからなかった。
「しらばっくれないでよ。吉祥寺で一緒に歩いてるの見たんだから。あんたなんかガキが相手にされるわけないでしょ。もしかしてたぶらかしたんじゃないでしょうね」
そこでやっと意味が飲み込めた。
「何勘違いしてんの? あいつはお母さんの再婚相手。まだ認めてなんかいないけど」
「認めてないってずいぶん偉そう。私のくそ親父と変えてほしいぐらいだわ」
「はあ? あんたこそなんなのよ。先生ってことはあいつが働いてる塾の生徒? それがなんか関係あるわけ?」
あいつは最近吉祥寺で塾の講師を始めたようだ。この女はその生徒らしい。
あいつの実家は京王線の方なのに何でわざわざうちの近くで始めたのかわからないけど、この際関係がなかった。
「先生にはもっとふさわしい人がいるってこと」
「お母さんのこと何も知らないで勝手なこと言わないでくれる」
「あなたみたいな連れ子がいてかわいそうっていう意味よ」
そんなことを一気にまくし立てて自分の教室に帰っていく。すごいむかつく。一体何なの。それもこれもあいつのせいで。
と考え出して、じゃあ、あいつがお母さんの結婚相手じゃなかったら、あの誰だかわからない小生意気な小娘は、あいつが好きとか言い出すのだろうか。まさか。そもそもお母さんと同じ歳だから、四十一か二でしょ。ありえない。二十以上も上だよ。
そんなことを考えていたら、クラスの友達智恵が話しかけてきた。
「さっきの柏原さん?」
「知らない」
「あの人敵に回さない方がいいよ。目付けられたら、色々嫌がらせしてくるって噂だよ」
もう遅いっつうの。
「目を付けられたらどうなるの?」
「C組の子があの人たちのいじめで不登校になったって」
最悪だと思った。
そもそも私立の女子高でいじめなんてあるのか半信半疑だったけど、やっぱり女子高でもあるんだ。
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