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その日から、柏原さんとその取り巻きに囲まれるようになった。お母さんに先生と別れるように言えとか言ってくる。一体何様なのか。そんなに気に入ったなら、自分でアプローチすればいいじゃない。
とりあえず次の土日にあいつに聞いてみた。
「ねえ、柏原さんって知ってる?」
「柏原さん?」
「塾で教えてるでしょ」
「ああ。誰だっけ?」
「知らないの?」
「顔見ればわかるんだけど、名前まではね」
ふーん。私はいいこと聞いちゃったと思った。顔の特徴を事細かに説明すると、やっとわかったようだ。
「その柏原さんがどうかしたのか?」
「別に」
因縁付けられてるとか話したって仕方ないし、そこは黙っておいた。
月曜日、また学校で柏原さんがからんできた。
「お母さんにね、先生の話したら、会ってみたいって。もしかしたらあんたのお母さんより気に入るかもよ」
私は「はあっ?」って思った。
「馬鹿じゃないの」
「馬鹿? あんたがいらないなら、私のお父さんにするんだから」
そんなことあるはずがないし、本当に馬鹿。何夢見ちゃってるの。
「あんたの名前も覚えてなかったんだから」
「は?」
「柏原さんなんて知らないって。いいきみ」
私はいい加減うんざりしてて、つい言ってしまったのだった。
柏原さんはそれにキレてぼかすか殴ってきたので、殴り返した。収集がつかなくなって、気付いたら先生を呼ばれて、取り押さえられた。向こうが先に手を出したんだって主張しても、どっちも悪いと言われて、親に伝えると言われた。
しかも、先生がぶつぶつ言ってる声が耳に入った。「これだから母子家庭の子は」と。
お母さんが悪いみたいなもの言いに、私は悲しくなった。私が悪い。私のせいでお母さんまで悪く言われるなんて絶対に嫌。お母さんに知られたくない。
私は先生に、自分で親に連絡するから待ってと言った。
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