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私は恐る恐るあいつに電話した。
「助けて」と。
あいつは実家からバスで駆けつけてくれたようだった。京王線の駅から成城まではバスが出てる。
校門であいつを待ってた。事情を説明した。母子家庭だからと言われて悔しかったという話をしたら、そんなことを言う教師がいるなんて信じられないと言われた。
一体どうしてそんなことになったのかと聞かれ、私は言葉につまった。全部あんたのせいだって言うのは簡単だったけど、誰にもこのもやもやとした気持ちが伝わらないと思った。
「私の今までの気持ちとか、離婚した父親のこととか、何も知らないくせに、うらやましいなんて言われたくない」
とだけ言うと、わかったとそいつは言ったのだ。私の頭をポンと叩いて、大丈夫だからと。
私は何も言えなくなった。ただ、この人を信じようと。
そいつは先生に対してまくし立てるように言っていた。私の気持ちを考えろと。母子家庭だからと差別するような発言は問題だと強く言ってくれた。私はうれしかった。
私のなんなのかと先生は聞いたので、もう籍は入れてるけど、年度の途中で名字が変わるのはよくないから、私の名字だけ変えてないとはったりを言っていた。
私は少し恥ずかしくなった。自分はずっと反対していたくせに、こういう時だけこの人を頼るなんて最低だと。
でも、私はどこかで確信していたんだと思う。必ず来てくれると。
それは私がお母さんの大事な子供だから、義理があるとかじゃなくて、そういう人だって気付いてた。
お父さんと口に出してしまいそうになって、でも言葉を飲み込む。怖かったのだ。信じて裏切られるのが。この人はそういう人じゃないってわかっていても、無条件で信じることができなかった。試していたのだ。人の良さにつけこんで。私はなんて嫌な子供なんだろう。
でも、そんなの全て見透かしたみたいに、心配するなとそいつは言った。
なんだか泣きそうになった。
先生は私に謝った。
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