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もう何度目か。
こいつに付き合って、また延々、話を聞かされたのは。
ふと目をやると、泣きはらしたせいで、目の周りは真っ黒。
その一筋がピエロの涙のペイントのようにくっきりと頬に刻まれている。
噴き出しそうになりながら、まじまじと眺める。
顔だけ見ると、まぁまぁ可愛い。
本人は自分の素顔に自信がないらしく、化粧はばっちり抜かりなし。
洋服も甘すぎず、辛すぎずの男性うけの丁度いいところをついている。
今回も3か月目までは、何もかもが絶好調と、満面の笑みで俺に語っていた。
俺はいつもの事ながら、段々と素の自分と他者から見た自分とのギャップに疲れ果ててるこいつを気にかけていたんだ。
俺の読みは的中。昨日、またもや振られたらしい。
こいつは俺の前では、普通にゆるっとしたTシャツに、ワイドパンツなんか履いている飾り気のないやつなんだ。
だけど、冷蔵庫の残りもので飯をちゃちゃっと作ったり、花をいつも部屋に飾っていたりと、女らしい一面もちゃんとある。
俺は密に、こいつは俺といるときのような自然体な姿を好きな奴に見せた方がうまくいくんじゃないかと思ってる。
「あれ、寝ちゃってた?」
やっとお目覚めか。こちらの心配はよそに、大あくびしながら瞼をこすっている。
落ちこぼれのピエロのような顔のまま、洗面台にとぼとぼと向かっていった。
さんざん昨晩、愚痴に付き合わされた俺もつい、うとうとと…。
頭をポンと小突かれて目が覚めると、うまそうな朝飯が目の前に。
ふと見上げると、ゆるっとした団子頭に子供っぽい素顔で、
「おはよ。昨日は私の愚痴に付き合ってくれてありがとう」
といつもの笑顔。まぁ、俺のような優しいお兄様はいないだろうな。
無理して笑顔つくりやがって……
「あんまり無理すんなよ」と言いかけて、言葉を飲み込む。
こういう時は黙って見守ってやるのが男ってもんだ。
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