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夢幻の街の喫茶店
気がつけば、橋を渡っていた。
お気に入りのスニーカー、履きなれたジーパン、肩周りがラクで愛用してるカジュアルジャケットと、付き合いで行ったなんかのフェスのTシャツ……は、素材感が好きでよく着ている。
「そんで、ポッケにはスマホとタバコ……と、ほほーん」
今更すぎる持ち物チェックをしているのは、どこにでもありそうな橋の上で。
幅広の頑丈そうなコンクリの上を、僕だけがのんべんだらりと歩いていた。
「ヴァ……ッ、小銭入れも無いじゃん!そっかぁー……………… 」
突然の出来事だが、身なりや持ち物はいたって普段に沿っているらしかった。ここがどこで、この橋はどこに繋がっていて、なんてことはきっと渡りきればわかるだろう。
「ん?分かんなきゃいけないんだっけ?まぁーいっか」
小さく笑ったひとつきりの影がアホ面を揺らしながら、ぽってぽってと橋を渡りきる。
橋の先は賑やかだった。
人がたくさんいる。
活気づいた異国の地のような、先進的な都心のような、自然とツクリモノが混在している筆舌し難い不思議な空気を纏っていた。
それなりの橋を渡るのが僕だけだった、先程までの寂しい景色とは大違いだ。
「あ、コーヒーの匂い…… 」
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