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《ラティオ》は白と青を基調とした特殊スーツで、頭から足の先まで覆っている。誰もその正体を知らない。神出鬼没、どの時間だろうが、どの街だろうが、必要とあらば参上して人々を救う。格好良すぎるヒーローなのだ。
小学生の頃、将来の夢に「ヒーローになりたい」と書いた。俺だけじゃない、当時の子どもの憧れはみんなそうだ。野球選手やサッカー選手、芸能人になりたいのと同列に、ヒーローになりたいという夢が上位にランクインするくらい、《ラティオ》は皆の憧れの的だった。
俺が中学生になった年に、《ラティオ》は活動を休止する。
行方をくらました《ラティオ》を求め、色んな人たちが探し回ったが、見つからない。
だが、俺は知っていた。
《ラティオ》はもう動けなかった。
怪物との戦いで背中に強い衝撃を受けた《ラティオ》は、ベッドから立ち上がることが出来なくなってしまったのだ。
そのまま、《ラティオ》は人々の記憶から消えていく。
そうして、正義の味方を失った街は、次第に混沌としていった。
*
カーテンがザッと開かれ、朝日が降り注ぐ。
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