HERO

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 首から上と右手は動くからと、父さんはパソコンや読書で時間を潰す。家では殆どベッドの上。どこかに連れ出すとか、どうにかしてあげたいところは山々だろうが、何を犠牲にするか取捨選択をすると、どうしても出来ることが限られてしまうと、母さんはよく嘆いている。  いつだったか、自分がデイサービスで一番年下だと父さんが言っているのを耳にした。そりゃそうだ。働き盛りの中年男があんな(てい)たらく。無理もない。  虚しいに違いないと、俺だって思う。  正義の味方なんてクソ仕事してたばっかりに、打ち所が悪くて寝たきりなんて。  ヒーローって何だ。  誰かを救うために、自分の命、人生、家族まで犠牲にする生き物なのか。  俺はいつしか、ヒーローってヤツを、父さんという存在を、嫌うようになっていた。  *  正義の味方がいなくなれば、警察が動けば良い。軍が動けば良い。新しいヒーローが生まれれば良い。
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