ハッピー・てるてるタイム

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ハッピー・てるてるタイム

「うううう……」 「ぐぬぬぬぬぬぬ」 「うー」 「ぬぬぬぬっ!」  教室の窓に張り付いて、外を睨む数名の男子。その面子には共通点があった。運動大好き遊ぶの大好き、間近に迫った遠足を心待ちにしているメンバーだ。  彼らが気にしていることは一つ。三日後に迫った遠足が晴れるかどうか、である。残念ながら現在進行形で、外は土砂降りの雨なのだが。 「バイウゼンセン!?とかなんとか!三日後だけでもどっか行け!海の向こうとかに行けー!」  ついに悪ガキの一人が、地団駄を踏んで叫び始めた。元気がいいなあ、と思いつつ。俺はよいしょ、とひっくり返ってふざけるそいつのお腹の上に座った。ぐえ、とかいう蛙を潰したような声が聞こえたが無視である。 「梅雨なんだからしょーがない。お前みたいなお馬鹿でも、六月っていうのは雨降るもんだってのはわかってんだろー?」 「い、委員長、重いっす……あと男の尻に敷かれる趣味はないっす……」 「それが言える元気があるならしばらく座ってても大丈夫そうだな。あー快適。ちょっと汗臭いけど」 「酷くね!?」  漫才のような掛け合いをしつつ、俺も教室の窓の外を見た。滝のような雨、というのはまさにこのことだと思う。そろそろ帰る準備を始めた女子達も、この空模様は気になるのか数人が立ち止まって同じ方向を見つめていた。ちらちらと目に入る赤や黄色のランドセルに加え、それぞれが手に持った傘が実に色鮮やかである。  ちなみに、委員長というのは俺のあだ名だ。クラスで一番成績が良くて、学級委員長をしているから、という安易な理由である。まあ、悪い気はしない。何故ならそうやって彼らが自分を呼ぶ理由が、俺のことを一定以上リーダーとして認めてくれているからだということを知っているのだ。 ――まあ、六月に遠足持ってきちゃうのもなんだかなーってやつだよな。雨に降られるなんて予想できそうなもんなのに。  本来ならば五月のうちに遠足ができる日程、であったらしい。しかしカリキュラムの変更やらなんやらがあったせいで日程がキッチキチになり、五月に遠足を行く隙間を作ることができなかったのだそうだ。  実際、五月というのは祝日が多く、当然授業時間も少なくなる。大人の事情はよくわからないが想像はつく。一年間で、その年に与えられたカリキュラムを全てこなさなければいけないのだから本当に大変なのだろう。突然の台風やら学級閉鎖やらで、授業が行えなくなる時も当然あるのだから余計にだ。  週一回の塾からの帰り、八時頃に近くの塾から学校を見るといつもまだ電気がついていた。先生達は、一体どれくらい遅くまで残って仕事をしてくれているのだろうか。
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