ハッピー・てるてるタイム

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 ***  一見暗いように見えるとか。  友達を作る気がなさそうだとか。  そんな風に人の印象を決め付けて、シャットアウトしてしまうのは簡単だ。だから近づかないでおこうとか、近寄りがたいと思って線を引いてしまえばそれで終わりなのである。  でも、俺は知っている。大して長く生きてもいないけれど、よーく知っているのだ。  本当に、友達が欲しくない人間なんかひと握り。多くの奴らは、友達の作り方がわからないだけ。心を閉ざしているように見えたって、同じ小学生、同じクラスの仲間であることに違いないのだ。あとはこっちから勇気を出して、少し距離を詰めていくだけなのである。  綺麗事でもなんでもいい。いじめっ子達に仕返しをできるわけでなくても、怖い気持ちが残っていてもいいのだ。いつか、そういうことを思い出さなくなるくらい、楽しいことをたくさん知っていくことができれば。 「でっけえええ!」 「ちょ、やばすぎやばすぎ!これ窓塞ぐレベルじゃん、ていうか委員長の持ってきた布がまじででっけえええ!」 「やべええええ!」  やがて大騒ぎの後。たくさんの小さいてるてるぼうずに囲まれて、超巨大なてるてるが出来上がっていたのだった。若干そうじの時間に食い込んでしまって先生が涙目だったが、まあどんまいである。男子が楽しそうに騒ぎ、女子は呆れつつもまんざらでもなさそうに巨大てるてるぼうずを見上げる景色。  悪くはないだろう。俺が書いたてるてるの笑顔は、だいぶ歪に見えると大不評ではあったが。  あの後、村松以外の二人にも声をかけ、てるてるぼうず作りに参加を促していた。村松に話している内容を聴いていたからなのか、残り二人は驚くほどあっさり承諾してくれたのである。おそらく、本当は動物園そのものは楽しみであったのだろう。ただ、クラスのみんなとうまくやれる自信がなかっただけで。 「こんだけデカけりゃ、晴れは間違いないっしょ!よっしゃ吊るせ吊るせー!」 「お前ら後にしろ、掃除しろー!」 「ぶー!」  放課後。ホームルームの後で、てるてるぼうずはしっかり窓へと吊り下げられることになった。他の皆が作った、大量の小さいてるてると共に。  心なしか外の雨足も弱くなってきた気がするし、きっと効果も出ることだろう。 ――天気になるって!やまない雨なんて、本当はどこにもないんだから!  そして、来る遠足当日。  空にかかった虹を見て、クラス全員で歓声を上げ、俺を含めた数人がテンション上げすぎて水たまりですっ転ぶことになるのは――ここだけの話である。
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