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「――雨、止まないね」
「……ああ、そうだな」
放課後の教室に彼女のかったるそうな声が響く。
俺と彼女以外に人影はなく、普段と同じ教室なのにどこか違って見える。
それは誰もいない早朝の教室と同じく新鮮な気分だ。
黒板には白のチョークで控えめに『補習』とだけ書かれていて、具体的な時間や内容は書かれていなかった。
その文言が俺を鬱屈とさせるが、これに関しては課題の提出を怠った俺が悪い。
完全な自業自得だった。
しばらくシャーペンでプリントに書き込む音だけがやけに大きく聞こえ、教室内を支配していた。
だが、数分も経たないうちに隣からは何かを書く音が聞こえなくなった。
チラリと横目で様子を見ていると、通学鞄からスマホを取り出して横向きにする。SNSをチェックとかではなく、完全にゲームをするモードに入っていた。
まあ、彼女が何をしていようとも監視役の教員はこの場にはいないので、最終的にプリントを終わらせればいいとでも思っているのだろう。
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