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控えめな音量でタイトルコールが流れ、ゲーム内楽曲のイントロが聞こえてくる。
タップする効果音とともに、控えめな音量で楽曲が流れ始める。
どうやら彼女はリズムゲームをしているようであった。
外では本降りの雨が降っていることもあり、聞き覚えがあっても何の曲かまではわからなかった。
『スゴい、フルコンボだよ、やったね!』
キャラクターのボイスなのか、少しハスキーな女声が聞こえてきた。
それと一緒にご機嫌なのか彼女の鼻唄も俺の集中力を掻き乱していく。
さらに――。
「――ねえ、君って運が良い方? それとも悪い方?」
臨席の彼女が興味津々といった感じにそう尋ねてきた。
それがトドメとなり、俺は一度嘆息をして静かにシャーペンを置いた。
「さあな。ま、平均的なんじゃないか、知らんけど」
「へえー、……じゃあ、はい」
彼女が先ほどまでゲームをしていたスマホを渡してくる。
「いや、急に渡されても困るんだけど……」
「じゃあ、交換で」
「お、おい……」
八割がた終わっていたプリントを咄嗟に強奪し、その答えを「ふむふむ、なるほどー」とわざとらしく声をあげながら書き写していく。
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