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「…………」
「……気を取り直して次だな」
彼女は無言であった。
ロードの早さやガチャの結果からして、既存のキャラクターしかいないのだろう。
ランク的には先ほど一つ上の『Sれあ』がいるけれど、彼女は気に留めていない。
あくまでも狙いは『SSSれあ』だけなのだろう。
「じゃあ、引くぞ」
「……あ、うん、よろしく」
二度の爆死で完全に興味を無くしてしまったのか、彼女はプリントの写経作業に戻ってしまった。
明らかに期待していないといった感じだ。
だからか、ボタンを押すことを躊躇してしまう自分がいる。
このまま押さなければいいのではないか、と。
そんな囁き声が聞こえた気がした。
これはきっと幻聴で。
結果は爆死であると確定しているわけではない。
彼女の欲する『SSSれあ』が出るかもしれないし、僅差で出ないかもしれない。
そうネガティブな思考を追い払い――俺はボタンを押し目を閉じる。
ロードが終わるまでの間、降り続ける雨の音がどこか大きく聞こえた。
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