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女神像から、またあの声が聞こえる。
『あなたをこの世界に転生させました。同じ転生者を集めなさい。あなたの娘もこの世界にいるのですから』
疑問符だらけの、男……だった少女の脳内。
しかし、質問をする隙もなく、話は続けられる。
『この世界は危殆に瀕しています。あなたたち転生した者たちの祈りで、救済してください。すれば、あなたたちの罪は浄化されるでしょう』
「わたしの罪とは何だ?」
少女の高い声で尋ねる。
クスクスと笑うような、小さな声が聞こえた。
『あなたの罪は、仕事にかまけて家庭をかえりみなかったこと。娘の存在を知りながら、それを救えなかったことです』
「ああ、それは、親として最大の罪なのだろうな」
少女の愛らしい顔に嘲笑が浮かぶ。
クスクスとまた笑うような声が響く。
『私の声を世界の民に届けなさい。さすれば、徐々にあなたのもとに転生者が集まる。生きている娘とも再会できるでしょうね』
うまく行けば、と小さく続ける。
「主よ、それがあなたがわたしに与える試練か」
『迷える子らに祝福の光があらんことを』
少女の問いには答えず、天の声はそれだけ告げると聞こえなくなった。
訳もわからず、取り残される少女。
「しかし、この姿では父娘の再会とはいかぬだろう。皮肉なものだ。一番遠い存在と思っていた主に選ばれてしまうとは」
ぽつり、ぽつり、こぼれる言葉。
無理難題を押し付けられた少女は、それでもこの世界のどこかにいる娘を探すことにした。
今度こそ、彼女の幸せを見守るために……。
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