王道転校生、現る!!

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 ー始業式から2週間後ー    「巡!!!起きて!!!」  大きな声で巡を呼ぶその声。しかし、巡は起きない。布団をかぶり直して、寝返りを打った。  「起きて!!!」  巽は巡のほっぺを叩き始めた。  ペシペシペシペシ。  …。  ……。  ペシペシペシペシペシペ…  「しつこい!!!!!」  「あっ、起きた♡」  不機嫌そうに顔を歪めている巡とは対照的にニコニコと眩しい笑顔を浮かべる巽。  巡はスマホを見た。  5:45  「はぁ?こんな時間に起こして、何がしたいんだよ…」  低血圧なのか、巡の声はひどく小さかった。  「今日、王道転校生が来ます!!」  「は?今日?どこ情報だ、それ」  「ホスト先生にしつこく聞きました(キラッ」  …宮前先生。すみません。  このバカの代わりに謝ります。    「それがどうした?」  「王道転校生を見に行きます!!」  「は?」  「だから、王道転校生(省略」  巡は巽の胸ぐらを掴んだ。  「そんな下らない理由で俺を起こしたのか?あ?見に行くなら、勝手に一人で逝けよ」  「字違うw」  「そうか、そうか。死にたいようだな」  巡は拳を作って、巽を殴ろうとした。いや、もう殴っていた。  「痛いw」  「まじで俺を巻き込むなよ」    巡は頭を抱えた。  長い前髪で顔はよく見えないが、眉間にシワを寄せているんだろうな、と巽は笑う。  「なんで一人で行かないんだよ」  「一人で行くと、フラグが立つといいますか…」  「くだらね」  「くだらなくない!!腐男子たるものとは、陰で観察して妄想して、楽しむものなのさ!!断じて、俺が当事者になることはない!!」  「そうか。世間には腐男子受けというものがあるらしいな。うん、お前は立派な腐男子受けになれるよ」  珍しく巡は口元を上げて笑った。しかし、目は笑っていない。  巡は朝にひどく弱く、ギリギリまで寝ることが多い。それは巽も知っていることだ。  それでも、巽には譲れないものがあったのだ。  萌が生まれる第一目撃者になりたいのだから。  「あの、ごめんなさい。食堂おごります」  「1ヶ月分な」  「えっ!せめて、1週間に…」  「あっそ、寝るわ」  「あっ、待って待って!!わかった!1ヶ月ね!」  巡はにやりと笑う。スマホを見せて、録音した巽の声を聴かせる。  『あっ、待って待って!!わかった!1ヶ月ね!』  青ざめる巽。    「言質取ったぞ」  ニヤリと不敵に笑う。
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