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誰もいない放課後。理事長室への長い道を歩く一人の影。
その影は、理事長室の扉をノックした。
「ーーです」
「どうぞ」
扉の向こうには優雅に紅茶を飲む颯太がいた。窓から光が差し込まれていて、その光がひどく眩しかったのか、青年は手でかざした。
「やぁ、ーーくん」
颯太が優しい微笑みを浮かべて、青年を手招きをする。
青年は軽く頭を下げて、ソファに腰掛けた。秘書に用意された紅茶を一口飲む。
「この学園に来てから1ヶ月になるが、どうかね?」
「今のところ、不審な動きはありません」
「そうかい。ーーこの学園、面白いでしょ?」
「問題児しかいなくてびっくりしてますよ」
青年は困ったように笑う。
颯太もその話を聞いて、「あははっ」と大笑いをした。
「慣れたかな?」
「男同士での恋愛が当たり前ってことですか?」
「そうだね。それもあるが、学生として過ごすのも慣れたかな?」
「まぁ、慣れたくないですが、適応能力は高いと思ってるので」
青年の赤い目が光る。
「それにしても、さすがだねぇ。まだバレてないんでしょ?」
「はい。人数が多くて助かっています。そのおかげで俺と言う“人間”が認識されないで済むのですから」
さらに一口飲む。
颯太は感心、感心と頷く。
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