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「颯太さん」
「うん?」
「この学園はあなたとあの人が造ったんですよね」
「そうだよ」
青年の言うあの人とは誰だろうか。
「この学園、問題児しかいないけど、まぁ、楽しいですよ。いい学園ですね」
「君にそう言ってもらえるなんて、光栄だな。あいつにも聞かせてやりたかったよ」
「…」
「あいつは、本当に君のこと、大事に思っていたからねぇ」
そう話す颯太の目は優しくて。まるで、愛おしいと言っているみたいに。
「颯太さんは、あの人のこと、どう思っていたんですか?」
青年の問いかけに、颯太は目を大きく見開いた。
「颯太さんは俺が小さい時からお世話になっています。昔から見ているんです。あなたが、あの人を見る目が…」
「うん、そうだね。親友…といえばいいかな。あいつは僕のことを親友だと思っていただろうけど、僕はそれ以上の感情を抱いていたよ。
軽蔑するかい?」
「いいえ。そうだろうとは薄々思っていました。嬉しいです。あの人のことを想う人があなたで」
青年は紅茶を飲み終えると、ソファから立ち上がった。そして、
「ごちそうさまでした。
では、俺はまた生徒として紛れさせてもらいます」
そう言って、扉の向こうに消えた。
「…強くなったなぁ、ーーくん」
颯太は机の引き出しからある一枚の写真を取り出す。
そこには、
穏やかな笑顔ではなく、思い切って大笑いする颯太がいた。その隣には、怖い顔をしてはいるが、優しい瞳をする男がいた。
「見てたかい?お前が育てたあの子はあんなにも立派な大人になったんだよ」
写真を愛でるように、優しく触れた。
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