食堂イベント

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 「なぁ、お前、なんていうんだ?」  桃李が巽に名前を聞いてきた。巽は爽やかな笑顔を浮かべた。  巽は基本は爽やかで、優しいので、人気がある。おまけに顔もイケメンなのである。  この学園には親衛隊が存在する。生徒会や風紀委員会はもちろん…  そうじゃない生徒にもイケメンとか可愛いとかあれば、親衛隊が作られる。  中には崇拝する気持ちが強いあまり、過激な制裁を行う親衛隊もいる。  巽にも親衛隊がある。比較的巽の親衛隊は大人しいので、何も問題はない。  ただ、俺は静かに過ごしたい。  桃李の質問に、巽は考える仕草を見せた後、ニヤッと笑った。    あれは何かを企んでいるな。  ま、俺は関係ないか。  そう思い、ぼーっとしていると、  「巡っていうんだな!」  急に目の前に桃李の顔が現れる。巡の顔は変わらない。無表情なままである。威圧感がすごいのか、桃李は少しびびっていた。  が、そこは王道転校生なのでそれくらいではめげない。  「お前の名前、綾瀬巡って言うんだな!」  「は?」  巽の方を見ると、親指を立ててめっちゃいい笑顔でこちらを見ていた。  『近くで王道を見たいので、友達になりました!!お前もなw』  口パクでそう言ってきた。  ので、俺は  『覚悟はできてるんだろうな?』  そう返す。巽の顔が青ざめたが、気にしない。  「俺のことは桃李って呼んでいいぞ!」  「あー、はいはい。南雲な」  「え、桃李って…」  「悪いな、俺、人の下の名前呼べない病かかってんだ」  「そうなのか!それなら仕方ないな!」  「wwww」  簡単に騙されてくれた。  大丈夫かよ、お前…。  それよりも、  「藤堂、少し話をしようか」  「あっ(これは本気で怒ってるわな…」  巡は巽を連れ出して、どこかに行ってしまった。    教室内にて、巽の親衛隊が心配そうにドアを見つめた。  巽はいつも巡といる。  巡という人物は一言で言うと平凡。しかし、1年間一緒に過ごしてみて、分かったことがある。  掴めない人物。  無表情で、あまり喋らない。この学園では異様な存在だ。  なぜ、巽はそのような人と一緒にいるのか。  それが親衛隊には理解できなかった。
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