食堂イベント

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 二人が教室に戻ると、桃李は不良と一緒にいた。その不良は桃李を見て、優しく微笑んでいた。  「不良までも落としたか!!」  巽が桃李と不良を見て、拝み始めた。  「あっ!巽と巡!昼飯食べに行こうぜ!なっ、いいだろ!響!」  目立つ赤髪に、鋭い目つきが二人を睨む。  武藤響(ムトウ ヒビキ)。  不良ではあるが、頭はいいらしく、テスト成績は常に上位。  だが、言動が荒いため、怖がられている。…こいつも顔はいいから、親衛隊はあるらしいがな。  「うん、行こうか!」と巽が鼻血を吐きながら、いい笑顔でそう返事した。  ヴーヴー。  スマホの着信音が鳴り、電話に出ると、  『綾瀬?』  「大介か?どうした?」  『風紀委員会があるから、今日は一緒に昼飯食えない』  さっきから大介の姿が見かけないと思ったら、呼び出されていたのか。  生徒会と風紀委員会はテスト以外は授業免除などという特権がある。  羨ましいが、委員会の仕事が理由であれば、免除される。そう言う仕組みとなっている。  「了解」  スマホをポケットにしまう。  巽がニヤニヤしながら、こちらに近づいてきた。  「なぁ、巡。ここで説明しよう」  「なんだ?」  「王道転校生の取り巻きは、爽やかくん、不良くん、平凡くんって決まってんのね」  「それが?」  「爽やかくんはまぁ、俺でしょ。んで、不良くんは武藤くんでしょ。平凡くんは…」  「おい、それは俺のことか」  「ピンポン!!」  「…」  「そんな冷たい目で見ないでw  これでより完璧な王道イベントが見られるってわけさ!」  楽しそうで何よりだな。  「行こうぜ!みんな!」  張り切って、桃李がそう言った。  こうして、一同は食堂に向かった。響は桃李にべったりくっついており、それを連射しまくる巽。巡は3人から少し離れたところでついていく。    側から見れば、根暗な生徒の周りに顔偏差値の高いメンバーがそろっている。(巡を除いて)  親衛隊はおかしく思うだろう。  怒るだろう。  しかし、近づくことはできなかった。それはなぜか。  巡がいるからである。  巡は平凡ではあるが、一年前から制裁を受けている人物でもある。  学校を辞めてしまいたいと思ってもおかしくないほどの扱いを受けた。それでも、彼は飄々としている。  制裁をしても意味ないと思う親衛隊も増えた。それでも、親衛隊総隊長がそれを許さない。  ここにいる親衛隊は、かつて巡と関わった人もいる。その際に巡とのなんらかの問題が起こった。  だから、巡に関わりたくないから、親衛隊も迂闊には近づけないのだ。  こうして一同は食堂のばかでかい扉の前に立つ。桃李以外は耳栓をつけた。  桃李は「??」と首を傾げていた。  扉を見て、巡は軽くため息を吐いた。  食堂のメニューは本当にうまい。でも、巡は食堂に行くのはあまり好きではない。  なぜなら…
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