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幕間4
『いつか、お前の後見人に会わせてくれよな!』
無邪気に笑う巽の姿が目に浮かんだ。
「・・・誰のことを思い出しているのかしら?」
麻耶の声で我に返る。診察中だったな、と巡は苦笑いをした。
「いや、友人のことを」
「そう。あなたの友達は何も知らないの?」
パソコンと向き合いながら、麻耶はカルテに記入していく。
「いえ。全部終わるまで言わないつもりです。・・・もしかしたら、巽は、いや、あいつは察しがいいので分かっていることもあるかもしれませんね」
「いい友達を持ったのね」
麻耶の方を見ると、嬉しそうに笑っていた。
「塁人さん、とても心配していたわ」
「それはなんかすみません」
「私だって、あなたのことを息子のように思っているわ」
塁人と麻耶の間には子どもがいない。それ故に、巡のことをとても可愛がっていた。
「ありがとうございます。
俺の病気は・・・」
治らないんですか?
そんな言葉を飲み込んだ。
「進行、していますか?」
「ええ。こうして普通に話せているのが不思議なくらい。・・・聞いたわよ」
「はい?」
「体育祭、無茶したんだって」
「すみません。最後にせめて、思い出を作りたかったんです」
麻耶は「そっか」とだけ言い、あとは何も言わなかった。
ーーーー俺の死期はもうすぐそこまで来ていた。
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