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「巡さん」
潤が慌てて俺のところにやってきた。
「隆明様のGPSが反応しなくなりました」
赤い目がギラリと光る。
「あれだけ見張ってろ、と言ったのに」
「申し訳ありません。隆明様のGPSに何者か侵入してきたようで、その対応に追われておりました」
「他の執事たちは?」
「それが…」
まるでこの時を待っていたかのように、伊集院家が経営するほとんどの企業にサイバー攻撃が起きたという。
伊集院家に仕える執事やメイド達は皆、システム面や警備面で秀でている者がいる。その者たちの足止めをするために、サイバー攻撃を一斉に起こしたのだろう。
やられた。
伊集院家の使用人たちは当然対応に追われる。ーー潤もその1人であった。
「巡さん、どうしますか?」
念のために隠したおいたあるものがここで役に立つとは。
「…念のため、隆明様の校章に盗聴器を仕掛けておいた。もちろん、普段は聴いてない。だが、緊急事態だからここで使う」
「さすがです」
俺はインカムを耳につけ、隆明様の校章に仕掛けた盗聴器のスイッチを入れた。
ジジッ。
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