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「…仕方のない人ですね」
インカムを外し、巡はやれやれと笑った。
「隆明様は」
「巡さん!親衛隊たちから証言を得ました」
潤が親衛隊の2人を連れて戻ってきた。
「隆明様が向かったのは裏庭。坊主頭の男に、売りをやっていることを知られたくなければ言うことを聞けと脅かされたようです」
親衛隊の2人は体を震えさせ、ぼろぼろと涙を流している。
本来ならば、親衛隊は守る立場にある。しかし、彼らは守る方ができなかった。むしろ、隆明を危険な目に遭わせる手伝いをしてしまった。
「ごめんなさい…」
涙を流しながら、謝罪をする親衛隊の2人。
「坊主頭の男、見覚えがあるんです。顔つきや雰囲気が違っていたので、最初は気づかなかったんですけど…」
ーーーもしかして、あの人って…。
1人の親衛隊の口から衝撃の言葉が。
「…巡さん」
潤は隣にいる巡を見た。憤りで巡を纏う空気が一気に冷たくなる。
「ダークはどこまで…」
残酷なんだ。
そんな言葉を呑み込み、巡は震えて涙を流す親衛隊の2人を見た。
だよな。
自分のした行為が、好きな人、隆明様を傷つけることになるかもしれなかったんだ。
好きな人や大切な人を傷つけられるのって、辛いよな。分かるよ、俺もそうだったから。
本当なら、こんな目立つことをしたら颯太さんに怒られるんだけどな。
でも、君たちは俺に隆明様の居場所と有意義な情報を教えてくれたから。だから、俺が君らを護ってあげる。
ーーーそんなに怯えるな。大丈夫。俺がいるから。
「教えてくれてありがとう。隆明様はきっと大丈夫。君たちなら分かるでしょう?」
そう優しく話しかける。
親衛隊は潤に任せて、巡は隆明の元へ向かった。他の部下たちを引き連れて。
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