ダーク~本章~

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「ーーーそうか」 ほんの少しだけ、 坊主頭の男の雰囲気が柔らかくなった。 「佐久を誑かすのはやめくれ」 ばちん! 美しい男に殴られ、隆明は歯を食いしばった。泣くな。耐えろ。 「お前は綾瀬巡のために死んでもらう」 「話が違うだろ!」 「違わない。ダーク様はお前には、少しだけ傷つけていいと言っていたが、俺には殺せと仰った」 「そんな…」 殺される。 わかる。 これは、嘘じゃない。 雷斗は本気なのだ。 本気でダークのために、俺を殺そうとしているのだ。 体の震えが止まらない。 「いや、もっと苦しませて殺せば、綾瀬巡は復讐の鬼となる。そうなれば、俺はダーク様に褒めてもらえる」 狂っている。 バキッ!! また殴られる。 遠くで、綾瀬の優しい声が聞こえる。 『会長サマ。何ぼーっとしてるんですか?行きますよ』 いつだったか、社長就任発表会で綾瀬にそう言われたことがあった。 会長で、先輩のこの俺に物怖じしない口調が新鮮だった。 ここで耐えたら、なぜか綾瀬に褒められるような気がした。 『よくがんばりましたね』 隆明は思わず口角を上げた。 少しだけ恐怖心が紛れたのだ。 そんな隆明の反応を見た雷斗は苛立ちが止まらない。容赦なく、隆明を殴り続ける。
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