ダーク~本章~

19/21
前へ
/347ページ
次へ
ーーー綾瀬の声がする。 隆明はふっと目を覚ました。 近くには綾瀬が俺を見ていた。それも優しい眼差しで。 「…綾瀬」 「気がつきました?」 目だけ動かすと、知らない部屋にいた。初等部からいるが、こんな部屋は初めて見た。 「大丈夫ですか?」 「ーーー綾瀬」 「はい?」 俺らしくもない。 「褒めてくれないか?」 俺の言葉に目を大きく見開く綾瀬。言わなければよかったとすぐに後悔するが、その後悔はすぐに消えた。 頭を優しく撫でられたのだ。 「よく頑張りましたね。ただの後輩が偉そうで申し訳ないんですけど」 苦笑いしながらも、綾瀬の手は止まることなく、俺の頭を撫で続けていた。 その温もりに、涙が出そうになる。 「今日は大事をとって、この部屋に泊まってください。安心してください。戸川先生は優秀ですから」 綾瀬の手が離れてゆく。 「待って」 綾瀬を呼び止めた。 「助けてくれて、ありがとう」 しばらくの沈黙。 「ーーーはい」 優しい声が返ってきた。 認めよう。 綾瀬は俺にとって大事な奴だ。
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1235人が本棚に入れています
本棚に追加