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ーーー綾瀬の声がする。
隆明はふっと目を覚ました。
近くには綾瀬が俺を見ていた。それも優しい眼差しで。
「…綾瀬」
「気がつきました?」
目だけ動かすと、知らない部屋にいた。初等部からいるが、こんな部屋は初めて見た。
「大丈夫ですか?」
「ーーー綾瀬」
「はい?」
俺らしくもない。
「褒めてくれないか?」
俺の言葉に目を大きく見開く綾瀬。言わなければよかったとすぐに後悔するが、その後悔はすぐに消えた。
頭を優しく撫でられたのだ。
「よく頑張りましたね。ただの後輩が偉そうで申し訳ないんですけど」
苦笑いしながらも、綾瀬の手は止まることなく、俺の頭を撫で続けていた。
その温もりに、涙が出そうになる。
「今日は大事をとって、この部屋に泊まってください。安心してください。戸川先生は優秀ですから」
綾瀬の手が離れてゆく。
「待って」
綾瀬を呼び止めた。
「助けてくれて、ありがとう」
しばらくの沈黙。
「ーーーはい」
優しい声が返ってきた。
認めよう。
綾瀬は俺にとって大事な奴だ。
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