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「分かった。今日のところはこれで勘弁してやる」
隆明はそう言って、会長の席に座り、書類と向き合い始めた。
「ありがとうございます」
巡は軽く頭を下げた。
「ねぇねぇ」
佑が「さっき、桃李ちゃんを叱ってたでしょ?」とずいっと顔を近づけてきた。
思ったよりも身長のある巡に佑は驚いたが、ヘラヘラした顔で巡の答えを待つ。
「…」
めんどくさいのか、巡は何も言わない。
「桃李ちゃんを庇わないの?友達なのに?」
その質問に、巡は目を細めた。
もともと鋭い目がさらに細められたので、その目つきに佑はたじろぐ。
ーーどいつもこいつも。
巡はそう、心の中で呟いた。
「友達だからです」
「友達だから?」
首をかしげる佑にそのまま話を続けた。
「友達だからこそ、間違っていることは指摘する。そうでないと、こいつはなんで自分が怒られているのかその理由を理解できないでしょう」
桃李は巡の顔を見た。自分のことをよく考えてくれている巡に驚いたからだ。
これまでにそのような人はいなかった。
「南雲は幸い、素直で正直です」
南雲はちゃんと言えば理解はできる。だからこそ、何がダメで何がいいのかを教える必要がある。
「今回は、会長を殴ったから、風紀委員会から説教を受けただけです。第一、友達だからって全部庇えばいいってもんじゃないでしょう」
佑の目を見据えて、そう言う。
「君は友達のことしっかり、見てるんだねぇ」
「友達ですし」
「うん、だからみんなは君のそばにいるんだろうね」
みんな、というのは巽たちのことだろうか。
そう言う佑の顔がどこか哀しそうに見えた。
「あなたにも友達はいるんでしょう」
「え?」
巡はそれだけを告げると、桃李とともに生徒会室から出て行った。
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